第1章 今宵、蜜に溺れてく
「大丈夫?理緒」
「たまちゃん」
なんとか気持ち悪さも落ち着いて。
洗面台でうがいもして。
匠に支えられながらトイレを出れば。
心配そうにたまちゃんが歩み寄ってきた。
「ごめん、たまちゃん。ありがとう」
「理緒お酒飲めないの知ってたのに、目の前にお酒置いたあたしが悪かったよね。ほんとごめん」
「玉城先輩、理緒ちゃんこのまま連れて帰るね?」
「あ、うん!!あ、理緒の鞄、取ってくる」
「いいよ。玉城先輩悪いけど預かっててくれない?今鞄取りに戻ったらみんな心配しちゃうし、シラケちゃうでしょ」
「あ、うん、わかった」
「ごめん、たまちゃん……」
「………なんか今日、匠くんやけに頼もしいね、どーしたの。いつも空気なんか全然読めないくせに」
「そんなことないよ?」
にこ、と微笑む匠に。
たまちゃんが押されてるのが、伝わってくる。
「ごめんたまちゃん、いろいろありがとう」
「お疲れさま、玉城先輩」
「………お疲れ、さま」
━━━━━━━---………。
あのあと、匠が拾ってくれたタクシー乗って。
「揺れると気持ち悪いかもしれないから寝ちゃっていいよ」
って。
匠に目元掌で覆われて。
背中トントン、て。
撫でられて。
それがすごく気持ち良くて。
真っ暗な視界の中。
すぐにどろどろの闇の中へと沈んだ、のは、覚えてる。
覚えてる、けど。
「━━━━理緒」
上半身裸の匠に押し倒されてる事実は、全然覚えてないよ!?
「た、匠?」
「なに?理緒」
目が覚めた途端に艶のある瞳で、熱を持った表情で。
近付いてくる顔が、あったら。
誰だってびっくりすると思うの!!
「………なに?この手」
思わず匠の近付いてくる唇を、自分の両手で塞いで距離を取った。
不機嫌全開にその手を取って、シーツへと押し付けながら再度、匠の唇が近付いてくる。
「ま、待って!!」
「だから、なに?」
「な、何、って……っ、だって……」
わたし、さっき……。
「ちゃんとシャワーで理緒の体洗ったし、文句ないでしょ」
あ、洗った?
シャワー!?
「━━━━!!!」