第1章 今宵、蜜に溺れてく
「なんだかんだでやっぱ付き合ってんだ、お前ら」
「そんなこと一言も言ってないじゃん、理緒!結局付き合ってたの?」
「ぇ、ぃやぁ、……ぇー、と」
付き合ってる?
付き合ってるんだっけ。
好き、とかは言われたけど。
昔から当たり前のようにずっと一緒だったし。
「………理緒ちゃんが一言うん、って言ってくれればすぐにでもチューして押し倒しちゃうんだけどー」
「な、なん……っ」
匠の爆弾発言は色づいた微妙な空気とともに、一瞬でみんなを黙らせるのに、効果覿面、で。
唯一事情を知ってる柳先生だけが、一人笑いを堪えている。
「〰️〰️〰️っっ」
この、空気。
ニコニコとわたしの肩へと手を回して。
空気読めない感全開の、匠。
でも決して空気読めないわけじゃ、なくて。
むしろ先の先まで空気を読んだ結果の、匠の思惑どーりの展開な、わけで。
耐えきれずに目の前にあったグラスを一気に飲み干した。
「照れちゃってかわいいなぁ、理緒ちゃん」
「篠宮お前あんまやりすぎると今にほんと嫌われるぞ」
「ひがみですか、先輩」
ぎゅうってほっぺた押し付けながら、わざとらしくクスクス笑って、匠。
「だいたい篠宮来ないっつってなかった?」
「理緒が匠くんに内緒になんてできるわけないんだって。理緒ほんと嘘下手」
「理緒ちゃんは素直なんだよ、ね、理緒ちゃん」
「篠宮、御影固まってる。いい加減離せって」
「照れてるの?理緒ちゃん」
ぐい、って。
またまた先生に首根っこ掴まれて引き剥がされても。
匠は平然と掌を頬へと、伸ばしてくる。
「……あれ、理緒ちゃん顔、熱い?」
「匠くんがそーやってからかうからでしょ」
「理緒ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫!!ごめん、トイレ!!」
もー、ほんと、熱い。
匠ってば近すぎだし。
なんでこう、距離近いかないつも。
みんなの前ではこんなに溺愛、激甘半端なくて。
ふたりになった途端あんなに急に、変わっちゃうし。
熱い。
身体中熱くなる熱を覚まそうと、ひとり席をたってトイレへと、向かった。