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今宵、蜜に溺れてく

第1章 今宵、蜜に溺れてく


匠は。


ずっと弟のような、存在で。
小さな頃から勉強だって苦手で。
いつだって試験前はわたしのところに泣きついてきた。
追試になった、って。
放課後良く一緒に勉強だってした。
人一倍どんくさくて。
良く転ぶし。
階段踏み外すし。
ものはぶちまけるし。
高校までの匠は、わたしからみても守ってあげなきゃいけないかわいい弟だったんだ。


だけど。



『なんのために今まで無害な弟、演じてきたと思ってる?』



高校卒業間近。
匠はその本性を、表した。











「………やっぱりな」
「先生のせいですよ、あんなことゆーから」

言いながら、勝手に顔に熱が集まって来ちゃう。
勝手に電車での出来事が、頭の中で再生されて。
思わず冷たい両手で頬に触れた。


「………あんま容易に想像させんなよ、頼むから」

はぁ、とため息付く先生に。
ボン、て余計に熱が上がった気がする。



「勝手に理緒ちゃんで変な想像すんなよエロじじぃ」


ぐいぐいと、わたしと先生の間に強引に割り込んでくる、匠。

「なんだ、もう注文終わったのか」
「あんたさぁ、こんなこと理緒ちゃんにやらせるつもりだったの?」
「幹事ってのはそんなもんだろ」
「こんな大勢の適当な注文、理緒ちゃんがさばけるわけねーじゃん!!」

「ごめんね?匠、大変だったよね」


確かに先ほどまで、あちらこちらから飛んでくる注文の嵐を纏めてインフォンでオーダーする匠はすごく忙しそうだった。
ほんとはあれ、幹事のわたしがやらなきゃいけなかったのに。


「理緒ちゃんはこんなことしないでいいよ、全部俺がやるからね」

「ごめんね匠」


「……御影にだけはお前ほんと、激甘だな」
「そりゃぁ、未来の奥さんには優しくしないと」


ぎゅむーって抱きつく匠に。
まわりからは歓声が沸き上がった。


「嘘!!ぇ、結婚すんの」
「理緒!!いつの間に婚約したの?」
「篠宮お前、まじか」


「ち、違う違う違うっ」


勝手に盛り上がるみんなに。
あわてて両手をふって否定。
その間も匠は、後ろから髪の毛やら肩やらにキスをふらせていて。


「………説得力、ないよ理緒」

「ぅ……」


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