The end of the story 【ツイステ】
第10章 Research and アクシデント
「ケイト先輩?」
「そうやって見知らぬ他人の言葉にまで耳を傾けて相手の心に寄り添うことができるのは監督生ちゃんの凄いとこだけど…全部助けようとするのはむしろユウちゃんの心がすり減っちゃうよ」
ケイト先輩らしからぬ静かな声。でも、私を思っての言葉。そんなことを言われるのは初めてで戸惑いながらぽつりぽつりと落ちてくる声を聞いていた。
そっとケイト先輩の手が目元から離れた時にはもういつもの声でどんな表情をしていたのかは分からなかった。
「なーんてね!これ、先輩からのアドバイス!!」
「へ?」
「いやーけーくんらしくないことしたなー。でも、本当に思ったことだよ。それにこの学園じゃそのキミの言葉に付け込む奴らが多いからね!」
それは確かにと思ってしまった。さっきの先輩みたいに少数派だが、優しい人ももちろんいるんだ。こうやってわざわざ忠告してくれる先輩も含めて。
それでも同情した人の心につけ込む人っているもんね……
なんとも言えない表情で頷く。
「……でも、ケイト先輩。私だって誰にでも信用してるって訳じゃないのでそこは間違えないでくださいね!」
ケイト先輩は私のことをそんな方に言うけど、私はそんなじゃないよ。
誰にだって譲れないものもあるし、誰にでも優しくできるわけじゃない。全く知らない、親しくもない人に対して…なんてできるわけない。
こうやって優しくすればいつか自分にもその優しさが返ってくると思いたい。自己満足に過ぎなくてきっとそれは他人からしたら偽善にしかならないのだろうね。
「!うん、それじゃ学園の校舎に戻るんだよね!暇だし鏡まで送る、というかそうしないとリドルくんに怒られちゃいそうだもんね。グリちゃんも待たせちゃってごめんね?行こっか!」
「ツナ缶をくれるなら許すんだゾ!!」
「今すぐには無理だけど、今度渡すねー!」
先に進むケイト先輩の横を歩きながらやっぱり先輩も優しいなぁと思うしかない。普通なら足の長さで置いていかれるところを私の速さに合わせてくれるんだもんなぁ。
私が女だからって言うのも入ってるかもだけど、それでも嬉しい。
でも、談話室に入ると寮服を綺麗纏った赤い髪が見えて咄嗟にケイト先輩の背中に隠れようとした私は悪くないはずだ。
「?!……えっとユウちゃん?」