The end of the story 【ツイステ】
第9章 Darkcloudsルームオーバー
「来年寮生が増えることを願うくらいしか私たちはできないよ」
こればっかりは仕方ないよとグリムの機嫌が良くなるまでぽんぽんと頭を撫でる。オンボロ寮に人が入ることは私たちが異例のようだから入ってくる見込みはほとんどないと言っていいだろうけど。それは流石にグリムには言わないでおく。
「ほら、お料理できたらグリムも食べられることになったんだからひとまず料理を作っちゃおう?」
「うぅ…オレ様も大会に出て、キャー!グリム様かっこいい!!、おい今ののスーパープレイみたか?!ってチヤホヤされたかったんだゾ!」
「いやに具体的な妄想だな……」
「ですね…」
そこまで具体的な妄想繰り広げていたとは思わなくて乾いた笑みが溢れた。こうして話をしている間にも時間は過ぎていく。自分もいい加減頼まれたことをしないといつになっても終わらない。
さっきから口ばかりじゃなく手を動かしてくれないかという無言の圧をひしひしと感じている。なんとかグリムを促して、料理を始めた。
穏やかな時間が流れる中、不安な空気が学園内に流れ始めていることはまだ誰も気づかない。
………影でニヤニヤと笑って獲物がかかるのを今か今かと待ち侘びている者以外は。
***
「そろそろマジカルシフト大会の選出選抜の時期だな」
「あぁ、なにを寮長に見せるか考えてあるか?」
階段で談笑しながら去年の大会を思い出す。相変わらずディアソムニアの圧勝で終わった大会。だから二位争いが激しい。
同寮の二人は自慢の魔法を寮長に見せる場面を頭に思い浮かべた。
「あたりまえだろ?この間、クルーウェル先生に見せたら好感触だったんだよなぁ。寮長に披露するの楽しみだ………ってうわああぁ!!!?」
唐突のことに話していた相方はギョッと目を見開いた。なんの前触れもなく、目の前でまだ大分高さのある場所で大きく飛んだのだ。
「なっ!?ど、どうしたんだ!急に階段から飛び降りて!!」
階下では飛び降りた本人も何が起きたのか分からず、目を白黒させている。ただごとではないと、慌てて階段を降りた。
相手の手を借りて立ち上がろうとするも足に鋭い痛みが走って足を押さえて悶える。二人の頭に捻挫という文字が頭に浮かんで血の気が引いた。
痛みよりも先に大会出場への不安が出てきたのだ。