The end of the story 【ツイステ】
第8章 Quiet story of one chapter
ていうか…今のまさか……。
さーっと血の気が引いていく感覚がする。
「う、う……す、すみません!失礼しましたぁーーー!!!」
自分でも信じられないくらいのスピードが出たと思う。先輩を鏡舎まで見送ろうとしてたのを忘れて先輩を部屋に置いて自身の部屋まで一直線だ。
バタンと大きな音が後ろで鳴って、部屋の入り口で体の力が抜けてへたり込む。
な、なんてことやらかしてるんだ私はーーー!!
頬が熱い。暖房のつけてなくて隙間風のあるこの部屋は肌寒いのに全身に熱が走るような感覚。
口元をそっと指先でなぞる。
あれ間違いなくしちゃったよね。
………キス。
初めてのキスが事故だなんて。こんな少女漫画的展開ある?
頭を抱えて先程の出来事を思い出した。
それからはグリムやゴーストたちに心配されるほど上の空で過ごすことになるのだった。
明日、もし先輩に会ったらなんてなんて話したらいいんだろう。
そのことで私の頭はいっぱいだった。
***
「……これは一体」
どくどくと脈打つ心臓をぎゅっと手で押さえて慌てて部屋に入っていったらしい監督生の後ろ姿を呆然と見送る。
バタンというドアの音に普段のボクなら注意していただろうにそんな余裕もない。
柔らかい唇が触れた場所を指先でなぞる。
何が起こったのか分からなかったけど、おそらくあの瞬間彼女の唇が自分のものと重なったのだろう。
彼女が顔を上げた瞬間、苺のように赤く染まった頬に目に薄っすらと涙が溜まっていてボクは息を呑んでその様子を見ていた。
「……可愛かった、なぁ」
初めて会った時と同じ、プルプルと震えていて。
エースたちの側で楽しそうに笑っていたり、ボクに訴えてきた時の真っ直ぐさとはまた違う。女性らしさを感じた。
ボクはしばらくオンボロ寮の談話室で初めての感情を持て余して立ち尽くしていた。
結局監督生にまだちゃんと謝れていないことに気づいて、次に会えた時にこの時のことも話そうと一旦寮に戻ったが、その後監督生の態度があからさまに変わって、中々目を合わせてくれなくなるのをボクはまだ知らない。