The end of the story 【ツイステ】
第8章 Quiet story of one chapter
三人でお互いのことを話しながらマロンタルトとお茶に舌鼓をうつのはすごく楽しくてあっという間に時間が過ぎていく。
調理道具を洗っているとそういえばこのマロンタルト、魔法かけないのか?とカリム先輩に聞かれ、なんのことだと首を傾げた。
「カリム、それじゃ言葉が足りなくて伝わらないだろ?それに監督生が魔法を使えないこと忘れたのか?」
「あ、そうだな!」
「まぁでも。そうだな、これは俺からのサービスだ」
「?それはどういう」
ジャミル先輩が胸元のマジカルペンを取り出すとマロンタルトに向けてペンを一瞬振る。タルトがほんの少し光るとすぐにその光は溶けるようにして消えた。
「これは……?」
「物体保存の魔法だ。一応二年の前期くらいで習う。一時的なものだから数日しか持たないと思うから注意してくれよ」
「物体保存……冷凍みたいな感じですか?」
「凍らせてるわけではないが、食品を運ぶ際に使うっていうのは同じかもな。さ、カリムがこれ以上寮に引き留めないうちに早く帰ったほうがいいぞ」
「え、でも後片付けが……」
「これくらい俺がやっておくから早く行かないとグリムってモンスターが心配なんだろ?」
何故わかったんだ……
確かに早めに戻らないとグリムがまた厄介なことを起こすと思ってはいたけど。
ぽかんと口を開いた。
さっきからソワソワしててわかりやすかったとジャミル先輩に言われる。そんなに分かりやすいだろうか………。
「ははっ!確かにわかりやすかったな。それじゃ鏡舎までオレが送るぜ!」
「え」
「なっ!お前は勝手に行動するな!」
「私、一人で帰れますよ。だから大丈夫です」
カリム先輩の寮服を引っ掴んでいるジャミル先輩の顔がさっさと行けと言っているような顔でこくりと頷いてマロンタルトを入れた袋を片手にスカラビアの調理室から出た。
スカラビアは本当に暑いな……寮から出てしまうとすごく涼しく感じる。さて、あとはこれをパーティーの終わった後に渡せばよし。
問題はもう一人にどうやって渡せばいいかだけど。
トレイ先輩ならどこに住んでるのか知ってるのかな。最悪、渡せなかったら別の日持ちするのを渡さないとだ。
***
「おーい、チェーニャ先輩!」
「おや?ネージュじゃにゃーの。俺に声かけるなんて珍しいにゃ」
パタパタと走ってくる後輩に不思議に思って首を傾げる。