The end of the story 【ツイステ】
第8章 Quiet story of one chapter
隣でジャミル先輩は部屋に入ってきた人物を察して頭を抱えている。
「ジャミル!!!!」
「はぁーお前もう少し静かに入って来れないのか?」
「監督生を寮に呼んだなんて知らなかった!教えてくれたらパレードと音楽隊を用意できたのに!!
そうだ!監督生!夕餉はうちで食べていけよ!
歓迎の宴を開いてもてなすぜ!!」
「カリム先輩。私はお菓子作りを教えてもらいにきただけなのでそれはちょっと……」
これが終わったら帰るのでとキラキラとした眩しいくらいの笑顔に申し訳なくなりながらも返すと先輩はしょんぼりと肩を落とす。
うぅ。カリム先輩ってこういうところがあるから断りづらい……何というか子犬とでもいうべきか。
きゅうーんと悲しそうに鳴く様子が目に見えてしまって、悲しませるのが辛いと感じてしまう。
きっとカリム先輩のこれは天性のものなんだろうな。
「カリム、監督生が困っているだろう。それに今からじゃ宴の準備が間に合わない」
「うー分かったよ、ジャミル。…折角だから監督生に見せたいものもあったのに……」
「ありがたいですが……また今度でお願いします」
「わかった!その時は豪華なパレードや宴で歓迎するぜ!!」
「えっと…ほどほどでお願いします」
何もわかってないと溜息を吐くジャミル先輩。
凄く苦労なさっているようで……
前に会った時は分からなかったけどカリム先輩に自由奔放さに振り回されてるって感じ。
って……先輩に気をとられて全然マロンタルト作りが進んでない!
「あのジャミル先輩続きを教えてください」
「あ、あぁ」
「そーいや。二人は何作ってるんだ?オレ監督生にお菓子作りをジャミルに教えてもらいたいってとこしか聞いてないな……」
「今更か?それに見ればわかるだろ、マロンタルトだ」
用意してあるマロングラッセを見ながらジャミル先輩は言った。絞り袋にヘラを使ってクリームを入れ込む。
ここ上手くできないんだよね。
「監督生、絞り袋を持つ時は左手は口金を支えるように持つんだ。それじゃ中のクリームが手の温度で温まってダレるし、力が入りすぎて上からクリームが出てきてしまうだろう?」
「な、なるほど……」
「おお。やっぱりジャミルは凄いなぁ」
感心したように呟くカリム先輩に同意だ。お菓子作り、特にトレイ先輩が作るようなものはあまり作らないという割には器用にこなして手際も良い。