The end of the story 【ツイステ】
第8章 Quiet story of one chapter
「いや、監督生から俺とリドル宛に貰ったものがあるんだ。折角だからリドルの仕事が終わってから開けようと思って部屋で待ってたんだ」
「……?監督生が、ボクたちに?」
きょとんと首を傾げるリドルに寮生から受け取った白の袋を渡すと袋から出てきたのは……
「箱……?それに手紙が入っているね」
「……まさか……」
監督生からの言伝でオイスターソースって……
「これは……マロンタルト…?」
いつの間に作ったのだろうか。特徴的なクリームの上にマロングラッセが乗ってる。プチガトー風に小さなサイズだ。
監督生からの手紙にはこうあった。
『お節介かもしれませんが、マロンタルトを作りました。パーティーでマロンタルトがダメなら終わってからなら良いのかと思い、送らせていただきます。もちろんオイスターソースは入ってませんので安心してください。細工はしてますが、早めに食べてくださいね。監督生より』
なるほど……それでパーティーの終わる頃に寮生が持ってきたのか。
しかし、細工って……。
「トレイ、このマロンタルトをよく見ると少し魔力がこもってる。恐らく状態保存の魔法だと思う。
監督生って魔法が使えないんじゃないのかい?
この魔法は難易度が高めで一年じゃ教えられないのにあのモンスターとうちの一年に頼んだにしては術が完璧に作動しているよ」
「あぁ。これが監督生の言う細工か」
よく食べ物の運搬で使われる魔法だが、確かにリドル言う通り一年じゃ使うのは難しいものだな。物体の状態を止めるもの。うちはケーキ屋だから少しでも保存が効くようにとこの魔法の簡略化したものをかけてはいるが……。
「……まぁいいか。リドル、折角だしお茶の時間にしないか?」
「うん、あの子の作ったタルトならきっと美味しいだろうね」
リドルがマジカルペンを振ると二組のお皿とフォーク、一緒にティーカップとポットも出てきた。水と火の魔法を応用してお湯を出すとカップに注ぎ入れる。
「なぁ、リドル。俺はずっとリドルを止めたいと思っていたのに今の関係が壊れるのを恐れて見ないふりをしていた。本当にすまない」
「!……トレイ。あの日ボクを部屋から連れ出して心を救ってくれたのはトレイとチェーニャだ。二人がやめない限り、ボクは幼馴染として居座り続けるさ」
にやりと小さく笑ったリドルに目を見開いて、俺はつられるように笑った。