The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
「リドルくんのユニーク魔法はエースちゃんのつけた首輪で『他人の魔法を一定時間封じることができる魔法』だよ。
その名も……
『首をはねろ(オフ・ウィズ・ユアヘッド)』!」
「相変わらずその名前怖いよな…」
「魔法士にとって魔法を封じられるのって首を失うくらいイタいことなんだ」
そっか……だから首を刎ねる。
どうしてだろう。
先輩の魔法封じの魔法のことを考えていると
トランプたちが思い浮かぶのは。
妙に既視感を感じているのは何故だろうか。
「どうしたんだ?ユウ。ぼーっとして」
「う、ううん。平気だよ、デュース」
具合が悪いのか?と心配そうな目が私を覗き込んでいるのに気づいて慌てて首を振った。
いけないいけない。
「ならいいんだが……あ、じゃあクローバー先輩のユニーク魔法って味を変えるものなんですか?」
「いや、正確には『要素を上書きする魔法』だな。今回変えた味の他にも色や匂いも変えられる。効力は短時間しか持たないから、落書きみたいなものだ。だから俺は、この魔法をドゥードゥル、落書きって呼んでる」
「トレイの『薔薇を塗ろう(ドゥードゥル・スート)』の魔法があれば、ツナ缶食べ放題も夢じゃねぇってことかぁ。意地悪なリドルの魔法なんかより、全然スゴイんだゾ!」
ローズハート先輩は意地悪じゃないし。グリム、先輩に向かって失礼でしょ。そもそも先輩の魔法でツナ缶の味に変えるのって……
あ、意外とありかもしれない。
これでツナ缶による食費が嵩む可能性が減る。
グリムが目を輝かせて言う言葉にトレイ先輩は首を振る。
「いや…俺の魔法なんか、寮長の魔法に比べれば子どものオモチャみたいなものだ。レベルが違う」
「………それは本当にそうでしょうか?」
「え?…今、何か言ったか?」
「いいえ………なんでも、ないですよ」
本当にそうだろうか。
魔法について深く知らないけれど、私にとってはローズハート先輩の魔法もトレイ先輩の魔法もどちらも凄いと思う。
魔法を封じる魔法に要素を上書きできる魔法。
どっちが上か…なんて私には判断できない。どちらも凄い魔法なことに変わりはない。
「……さ!今日はもう遅い。タルトを寮長に渡すのはまたにして、寮に戻ろう」
暗い顔をしていた先輩は切り替えるように笑って話を区切る。
けれど、どうにも気になるなぁ。