The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
ニコニコと変わらず穏やかな雰囲気の先輩はヤングオイスターソースと書かれたラベルの瓶を指さした。この先輩、本気で言ってる?言い間違いとかでもなく?
カレーの隠し味と違うんだから流石にこれは……。
エースやデュースも突拍子もないことを言い出した先輩をぽかんと口を開いて見つめた。
「カキからでた旨味がクリームに深いコクを与えるんだ。この『セイウチ印のヤングオイスターソース』。有名パティシエならタルトにこれを使わない奴はいないぞ」
「ま、マジか……そのソース結構しょっぱいやつじゃなかったか?」
「でも…カレーに隠し味でチョコ入れるしアリなのかも……」
「いやいや…私もそれは考えたけど……流石にそれはないない!お菓子作りで塩をひとつまみ入れたりするけど、これは味的に合わせるの難しいって!トレイ先輩もオイスターソース入れるのは諦めてください!!」
口八丁に乗せられ本気にし始めたエースたちを慌てて止めようと腕を引っ張って止め、トレイ先輩を説得しようとひとまずオイスターソースを取り上げるために腕を伸ばすとくつくつと喉を鳴らす先輩が見えた。
「ククッ……アハハッ!
嘘だよ!お菓子にオイスターソースを入れるわけないだろ?」
「んなっ!?ちょっとトレイ先輩!!?」
「悪いなっ、そんな…信じるとは…思わなかったんだよ」
「なんだよ!本気にしちゃったじゃん!」
笑いを堪えながらいうトレイ先輩はまさに食えないタイプの先輩という感じで。意地悪な生徒が多い中、優しい人だと思って行ったのにやっぱりこの人もこの学園の生徒だ!
「ユウは分かってたみたいだけど、ちょっと考えればありえないってわかるだろ!まぁなんでも疑ってかかれってことだな。先輩からの教えだぞー。教訓、教訓♪」
笑顔は変わらないように見えるのにさっきと違って全然尊敬した目で見れない…。
「コイツ。優しそうに見えてサラッと嘘をつくやつなんだゾ」
「うんうん。先輩、優しいし面倒見いいから尊敬してたのに…」
「そう、拗ねるなって」
悪かったよと続けて困った顔で私の頭をクシャクシャに撫で回す先輩にじとりと見上げる。何で頭を撫でるんですか…そんなことしたって私は誤魔化されませんよと頬を膨らませ、トレイ先輩の手を退けた。
先輩のせいで髪が鳥の巣みたいになっちゃったじゃないですか。