The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
「へーへー!わかりました!こうなったらやってやろうじゃん!」
「ふふ、エースってばやる気十分だね」
ここまで来たらやるしかないと吹っ切れるエースにクスクスと笑いながら毬栗のイガを外していく。流石にこの量だとイガを外すだけでも時間がかかりそうだ。ただでさえ、皮むきは一つずつやらないとで大変なのに。
首輪をつけたままのエースと私は魔法が使えないため、全て作業は手作業だ。先輩とデュース、グリムは魔法で皮剥きをするようだが、魔法ってそんな細かいことも出来るんだ……。
薔薇塗りの時の前科があるからグリムが燃やしてしまわないか心配しつつ、作業が進められていく。
エースはトレイ先輩に剥き方を教わってから元々の手先の器用さと要領の良さを活用してあっさりと皮剥きのコツが分かったのか、スルスルと剥いている。
「お、これ綺麗に剥けた!ほらユウ、見てみろよ!」
「凄い!本当に綺麗に剥けてるね」
「だろ?」
エースが得意げに見せてくる栗は渋皮なんて一つも残ってなくて、綺麗なものだ。
まだ剥き始めたばかりなのにエースって本当器用だよね。
「へぇーエースは器用なんだな」
「まぁね。オレ、手先の器用さには自信があるんだ」
トレイ先輩が感心してエースを褒めるとデュースとグリムが自分たちだって上手く剥けたと揃って見せてくる。
一気に騒がしくなる厨房に先輩はまだまだ栗はあるというのに元気だなと笑った。
「デュースとグリムも上手に剥けたね」
「おい、ユウ。あんまり甘やかすとこいつら調子に乗るからやめたほうがいいぜ?」
「エース、どういう意味だ」
「そうだゾ!調子に乗るのはエースの方なんだゾ」
ワァワァと騒ぐ三人にどうしたものかと先輩が苦笑しているのが見えて、わざとすんっと笑顔を消す。
その顔を見た先輩がギョッと目を見張ったのが分かった。
「ど、どうしたんだ?監督生」
「エース、デュース、グリム。口を動かしてないで手を動かしなさい。私たちはトレイ先輩に手伝ってもらってる側なんだから困らせないで」
目の笑っていない笑顔に三人はピシリと固まった。
一番先に動いたエースは誤魔化すように笑いながら作業を続けた。
「これが猛獣使い的才能……」
「さ、これで進められますね」
先輩の呟く声を無視してにっこりと笑うと栗を剥き続けた。