The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
思わずクスクスと笑ってしまい、エースとデュース、グリムには可笑しなものを見るような目で見られる。
そこからは私も参戦して栗を拾い始めた。
栗の入ったカゴは既に小山ができるほどで正直もうこれで充分なんじゃないかな?これくらいあればマロンタルトは普通に作れる量だけど、先輩は200個以上と言っていたからなぁ。
もう少しかな?と思いながら靴でイガを踏んで栗を取り出す。
「そういや、学園長室行くだけなのに遅かったな」
「あー…途中で迷子になって案内してもらったのと植物園でちょっと先輩に絡まれちゃってね」
「は?迷子になったのか?しかも絡まれた!!?」
「お前、オレに他人のこと言えねーじゃん!一体何やらかしたんだ!?」
まさに虎の尾を踏んだって言ってもいいできごとだったかな。いや、虎の尾じゃなくてライオンの尾だったけど。
怪我はなかったかとデュースがじっと私を見る。なんともないとひらりと手を振るとデュースはホッとしたように小さく笑った。
「サバナクローの先輩の尻尾をよそ見して踏んじゃってさ」
「うわー、それは怒っただろうね」
「うん。それで匂いを嗅がれてさ……」
「か、嗅がれた!?何だそりゃ!」
「だよねー、それで私のこと魔力の匂いがないっていうんだ。獣人って魔力の匂いまで嗅ぎ分けられるのかな?」
そうだったら凄いよねと笑いながら栗を拾う。私の後ろでエースとデュースが真剣な顔で目を合わせていたのには気づかなかった。
「匂い嗅ぐってそいつ変態なんだゾ。子分そういうのには近づかないほうがいいんだゾ」
「うーん。変態とは違うと思うけど……私もなるべく近づかないようにするよ。二度はないと忠告されているし」
私たちは話しながら栗の入ったカゴを抱えて植物園を後にした。恐らくしばらくは用がないだろうな。
***
トレイ先輩との待ち合わせ場所の大食堂の厨房では既にボウルやら裏漉しに必要なものなどが準備されている。
「お、随分と沢山取ってきたな…」
「これだけあればマロンタルト食い放題なんだゾ!」
「でも…これだけあるといくら人数がいるとは言え裏漉しが大変だね…」
「ははは……ユウの言う通り大変だが……
まぁ……頑張れよ」
山積みになった毬栗を見てトレイ先輩は苦笑をした。いくらこの人数で作るとはいえ300個以上の栗だからね。