The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
「そんな…じゃあ、どうしたら」
「ん?あァ……お前、よく見たら入学式で魔力がないって言われてた草食動物か」
「そうしょく……私、野菜以外に肉も魚も食べるからどっちかというと雑食です」
多分そういうことではないんだろうけど思わず口に出てしまった。呆れられるかと思いきや、ふぅんと怒りを露わにした表情から一変して面白いものを見るような顔だ。
えぇ……逆に反応に困る。
戸惑いながら目の前の人を見つめるとぐっと距離が急に縮まって息を呑んだ。
ななな、何が起こって……!
理解不能な状況に思わず固まった。
何で私、匂いを嗅がれてるんだ?
明らかに年上のしかも男性に首元をすんすんと嗅がれるというこのよく分からない状況。意味がわからなすぎて思考が停止しかけた。
「…ふっ。本当にちっとも魔力の匂いがしねぇ」
「ま、魔力の匂い?」
魔力に匂いがあるのかと固まった思考を動かしていると男性はようやく顔を離して、小馬鹿にしたような顔でニヤニヤと笑う。
「魔力のない無抵抗な相手を痛めつけるのは気が進まないが」
「!!?」
いやいやいや、全然気が進まないって顔じゃない!
早くここから逃げてエースたちの栗拾いを手伝わないとなのに。
後退って逃げようとするが、ぐいっと力強く腕を引っ張られて逃げる事は叶わなかった。
掴まれた腕が痛くて思わず痛いと声を上げるも男性に無視される。
「おいおい。このレオナ様の尻尾を踏んでおいて逃げるなよ。こっちは気持ちよく寝ていたところを起こされたんだ」
「ひっ!」
なァ?と耳元で話しかけられた言葉に震え上がる。一体何をされるんだろう。
パシリ?尻尾を踏んだ分、殴られる?
臓器売るのは嫌だなぁ。
ぎゅっと目を瞑って殴られるかもしれないと我慢する。
殴られるくらいならいい、その痛みは一瞬のものだから。
しかし、いつまで経っても何も起こらない。恐る恐る目を開けて見上げてみると男性は目を見開いて固まっている。
え。何?
「お前…………まさか……?」
「あの……?」
お互い戸惑いながら相手の顔を見ているのは側から見たら凄く不思議な光景だったと思う。
沈黙をぶち壊していったのは目の前の人を呼ぶ声だった。
「___レオナさーん!!」
「……あ?」
パタパタと駆け寄って来たのはこれまたふさふさの耳と尻尾がある生徒。