The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
しかし、歩いてる途中で先輩に色々貰うことになってしまったのは正直何でそうなったのか。
いや、スキンケアの話で夜に洗顔だけやって終わらせていることを話したせいからかもしれない。話した瞬間、元々鋭い眼光が狩られると錯覚しそうな目に変わった瞬間を見たのだから。
「ルークに話を通しておくから時間ができた時に来なさい。次に会ったときみっともないところ見せたら……ふふふ」
「うぅ……私、一文なしでこの学園来たからお金がなくて化粧品に使うわけには……」
「アタシが作ったオリジナルの化粧品だからお金はいらないわよ。アタシ、別にお金には困ってないもの」
だから少しでも身だしなみはちゃんとしなさいとクスクスと笑う声に諦めて頷く。これ以上断れば無理矢理押し付けられそうなのが目に見えている。
「次に会うのが楽しみだわ。さ、植物園はここよ」
「あ、ありがとう…ございます」
「ふふ。素直な子は好きよ」
威圧感があるし、綺麗すぎて近寄りがたいけどこの目は好き。見惚れてしまいそうなくらい真っ直ぐだ。
寮に戻るからと先輩とはそこで別れたけど、凄い印象に残る人だったなぁ。
植物園では見たことのない植物や南国の果物っぽいものまで実っていて私の目にはキラキラと輝いて見えた。
あ、あそこに生えてるのマンゴーに似てる…取ったら怒られるだろうけど、どんな植物なのかもっとゆっくりみたい。植物園の裏手に栗の木があるって言うんだからきっと栗だけじゃなくて、故郷のものと似た植物はきっとあると思うんだ。
差し込んでくる日差しに目を細めて進む。
だから足元にまで気を配れていなかった。
「い゛でっ!」
「え、わわっ!何っ!?」
何かを踏んだような感覚と一緒に誰かの声がした気がして振り返ると…
見覚えのある獣耳の男性。足元には靴の跡がついたライオンのような尻尾。
食堂で見た獣人の特徴だ。
でも、腕章をつけていない。その鋭く睨む緑の瞳に息を呑んだ。
「すみません!あの…」
「人の尻尾を踏んでおいて謝るだけで許すわけないだろ」
唸るような低い声が響く。私が踏んだのは本当にこの人の尻尾だったんだ。
こんな通路に尻尾を出しておく方が悪いんじゃ……と思いつつ、踏んだのは私だし……。
謝る他に許してもらうには……。