The end of the story 【ツイステ】
第5章 Spray パヒューム
本当は空き教室を使えればよかったんですが、男子生徒が入ってこないという保証が出来ないのでと学園長は謝るけど、十分これだけでも助かっている。
移動は大変だけど、バレるよりマシ。妙なトラブルを招いてグリムやエース、デュース。先生方の迷惑になるのは嫌だし。
「それから……先生方とサムさんには貴女が女性だということを伝えておきました。………トレイン先生には小言を言われて大変でしたが…これで体育育成も楽になるでしょう」
「え、体育育成?」
「倒れたのでしょう?バルガス先生と保健医のディアラム先生から報告を受けたんです。本当なら異世界から来たことと女性であることを先生方には説明しなければいけないのに本日先生方を集めて話したので遅くなってしまいました」
クルーウェル先生とトレイン先生は課題やテストは贔屓しないがいつでも聞きに来ていい。バルガス先生は体育育成のメニューをもっと軽いものにすると。特にトレイン先生からはエレメンタリースクールの魔法史の内容が書かれたプリント達も一緒に渡された。
エースの言っていたように異世界から来た私には常識が足りない。幼稚園児でも知っているような常識が。それを補うためのもののようだ。
サムさんからは衛生用品の数ヶ月分をオンボロ寮に届けておいたからしばらくは安心していいとのことだ。これはありがたい。
一年の担当じゃないはずの先生方からも私を気遣うような声と困ったら相談に乗るという伝言にきょとんと目を瞬かせた。
てっきり男子校なのに女子が通うことについて色々言われるかと思ったのに。
「話はここまでです。何か質問はありますか?」
「あ……いえ。……思ったより学園長って優しいですね」
「思ったよりとは何ですか。私は優しいですよ」
仮面の奥で笑うのが見えて、胡散臭いけど教師だと感じた。実際教師で校長なんだけど。
面倒ごとは押し付けてきて生徒からも評判がいいとは言えないけど、憎まれ役でそれでも生徒を見てるところ教師らしいなと思う。
「質問がないようなら戻って大丈夫ですよ」
「はい、それでは失礼します」
ぺこりと頭を下げて部屋を出る生徒の後ろ姿を目を細めて学園長はにこにこと見送った。私は優しいので生徒のために動くのは当然ですよ。
さてと…書類を片付けなくては。
全くトレイン先生の小言は本当に長いんですから。もう懲り懲りですよ。