第74章 忍界大戦7
「まぁいい。ほら、食え。今日だけだからな。」
リヨクはそう言って焼いていた串焼きをレンの前に差し出す。
「あ、りがとう…。」
レンはやっとそう答えると、それを受け取る為にそろりと手を伸ばす。
「……!」
その手は小さい自分の手。
そう言えば、リヨクが一回り大きく見える、とレンは自分の体とリヨク体を見比べた。
「…要らないのか?」
待ちくたびれたらしいリヨクから低い声が出た。
「いる…。」
今度こそ受け取って、一口ぱくりと食いつく。
兎の肉だった。
リヨクは狩りに失敗すると、どこかへふらりと出かけて、自分の分だけ兎を獲って来ることがあった。
ーあぁ、あの時の光景だ。
レンの目頭が不意に熱くなった。
「何泣いてんだよ、お前。そんなに腹減ってたのか?」
リヨクが困惑気味に尋ねると、レンは首を横に振る。
そして、黙々と食べ始める。
はらはらと涙を溢しながら…。
ー今までが夢だったのだろうか…。
だとしたら何て長い悪夢だろう。
10年先の未来までを体験したことになる。
ーまぁ、何でもいい。
リヨクが生きているならそれでいい。
今度こそ失わないようにするだけ。
レンは今にしがみつくように、持っていた串焼きの棒を握りしめた。