第66章 おわりのはじまり
ジューっという音と共に、野菜の焼けるいい香りが厨に漂う。
「レンちゃん、冷蔵庫に入ってる挽肉とオイスターソース取ってくれるかい?」
「…これですか?」
燭台切に頼まれて、レンは冷蔵庫を開けて目的の物を取り出すと、それを見せる。
「うん、そう。」
燭台切はレンから、ありがとう、と言って受け取る。
「レン、手が空いたらテーブル拭いてきてくれるかい?」
歌仙が味噌汁を作りながらレンに頼む。
「分かりました。」
レンは戸棚から布巾を取り出して水で洗っていると、
「なぁ、乾いたタオルあるか?水こぼしちゃったんだ。」
厚が厨の戸口から顔を出した。
「ここにある。」
小夜はそれを聞いて戸棚から乾いた布巾を取り出して渡した。
「お、さんきゅ。」
レンはそれをちらりと見ると、布巾を持って広間に向かおうとして立ち止まった。
舌に違和感を感じる。
「レンちゃん?」
燭台切は、様子が変わったレンに気がついて声をかけると、彼女は呆然とした面持ちで振り返った。
「ちょっと、外します。」
そう言って、布巾を燭台切に渡し、足早に厨を出て行ってしまう。