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君に届くまで

第65章 演練大会ーその後ー




ーー翌朝ーー

レンは寝返りを打とうとして、動きづらい状態に気がつき目が覚める。
ゆっくりと目を開けると、目の前に鶴丸がいた。

「……!?」

レンは驚きに息を呑む。
次いで、両手で握られている自身の手が目に入る。

ーどういう状況なんだろうか…。

レンが固まったまま動けないでいると、鶴丸の瞼が震えてゆっくりと目が開いた。
数度瞬きをすると、その目が優し気に細められた。

「具合はどうだ?」

「…大丈夫、です。」

そうか、と言いながら鶴丸の手がレンの額に当てられる。

「…熱はまだ少し高いが、昨日よりは良さそうだな。」

そう言うと、屈託ない笑顔を浮かべる。

レンは、何故今のような状況に陥っているのかが理解が出来ず、反応が出来ない。
彼女の様子が、少し可笑しいことに気がついた鶴丸が不思議そうな顔をする。

「どうかしたか?」

「…いや…、あの…。どうして…、一緒に寝ているのかな、と思いまして…。」

レンが辿々しく尋ねる。

「…え…?」

鶴丸はそれを聞くと、少し顔を引き攣らせた。

「覚えてないのか…?」

鶴丸がそろりと聞くと、レンは首を傾げる。
彼はその様子を見て、一気に冷や汗を吹き出した。

ー今の状況はこの上なく不味いのでは…?

「…昨日、夜中に起きて、だな。…その…、行かないでと頼まれた、から…。一緒にいた方がいいと思って、だな…。」

鶴丸が言葉も切れ切れに説明すると、レンの中に記憶の断片が掘り起こされる。


ー…確かに言ったかもしれない…。

無意識に近い行動で、全くの考えなしだった。
レンにも変な汗が吹き出した。

「…そういえば…、言ったかも…。」

そう言って、バツが悪そうに視線を伏せた。
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