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君に届くまで

第64章 演練大会ー2日目ー



「これは、加州殿の刀です。厠へ行く前に燭台切殿に預けていったようです。」

「…ちょっと見せてください。」

レンがそう言うと、江雪は素直に差し出した。
彼女は、刀を受け取ると柄を握った。その瞬間、僅かにびりっとした感触が伝わる。
不思議に思い、もう一度握り直してみるも何も起こらない。
静電気の類かと気に留めずにゆっくりと鞘から引き抜いた。

刀身はいつも通り綺麗に煌めいていて、傷の類は見当たらない。

「…怪我はしていないようですね。」

その時、丁度燭台切が戻ってきた。
レンは加州の刀を鞘に戻す。

「あぁ、レンちゃんおかえり。」

「はい。それよりも清光が居なくなったって聞きました。」

「うん。探しに行ったんだけど、やっぱり居なかった。」

「え…!?」

燭台切の言葉を受けて、刀剣達は騒つき始める。

「…不味いですね。」

レンはいよいよ、目元を険しくさせた。

「トイレも近くを2、3ヶ所回ったんだけど居なくて。一応控室の方にも行ってみたんだけど居なかったんだ。」

燭台切は眉を顰めて言う。

「そんな…!」

「本当に大将の言う通り、仕掛けられたのか…?」

江雪は顔を硬らせ、薬研は難しい顔をして腕を組んだ。

鶴丸は会場に設置されている時計を見遣る。

「どうする?もう少しで演練の時間だぞ。」

「今回は棄権にした方がいいかもしれないな。」

鶴丸の問いかけに薬研が返した。
だが、レンは首を横に振り、待ったをかける。

「…いや、このまま出ましょう。」

「出るったって、5人じゃ不利だ。負けは目に見えてる。」

幾ら怪我をしても治るとは言え、負け戦は気分は悪い。
薬研は思わず眉を顰めた。
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