第57章 宴
だが、薬研の問いにレンは珍しく眉を顰めた。
「気に入らないから、かな。」
「え…?」
薬研はその様子に驚いて、思わずまじまじとレンを見た。
常に冷静で感情を露わにしないレンが、怒っている…?
レンは薬研の視線に気がつくと、またすっと無表情になる。
「負けたら僕達どうしよう…?」
小夜は少し不安気にぽつりと呟いた。
それに釣られて彼等は不安気に俯く。
「負けたら…。そうですね。瀬戸さんを頼ってみましょうか。
まぁ、そう簡単に負ける気はありませんが。」
レンがそう言うと、彼等は驚いて彼女を見た。
「どうするんだ?」
「具体的には説明しづらいですが、陽動と撹乱、ってとこですかね。あとは”運”です。」
厚が尋ねると、レンは曖昧に答える。
「運かよ…。」
どちらにしろ不安は拭えるものではなかった、と鶴丸は額に手を当てる。
「…やるんですか?やらないんですか?」
突然後ろから声がかかり、彼等ははっとして振り返る。
鯰尾だった。
「今行きます。」
レンは淡々と答えてから歩み出す。
鯰尾はそれを冷ややかに見てから歩き出し、レンもそれに続く。
彼等はその背中を黙って見送るしかなかった。