第56章 七海の奪還
「レン!!大丈夫!?」
加州が駆け寄って触れようとするのを手の動きで止まらせた。
「すみません。肋を数本、やられました。息が、苦しくて…。」
レンは荒い呼吸の合間に事情を説明する。
「レン!大丈夫か!?」
遅れて鶴丸も駆け寄る。
レンは苦しげに頷く動作を見せた。
「肋骨を折ったみたいなんだ。」
加州が険しい表情で、レンの代わりに説明した。
それを聞いた鶴丸は小さく息を呑む。
「レン、一度本丸に戻ろう。」
「いえ、まだです。七海さんを、助けてからです。」
レンはそう言って、七海の方を見る。
「手を、貸してください。」
レンは怪我を負っていない方の手を伸ばした。
鶴丸と加州は顔を見合わせた後、レンを見て小さくため息をついた。
「ほら、捕まって。」
加州はレンを腕から支えるようにして寄り沿う。
彼女はゆっくり立ち上がると、傷に障らぬようにゆっくりと数回深呼吸をする。
「ありがとうございます。私のことより、鴉を抑えてください。前回とは段違いに強くなってます。3人では荷が重いかもしれません。」
そう言って、まだ戦っている大倶利伽羅達を見る。
つられて、加州と鶴丸もそちらを見た。
「行ってください。時期に五稜郭の部隊が来ると思います。その時までに鴉だけでも沈めておかないと勝機がありません。」
「レン…!」
加州は嗜めるようにレンを呼び、鶴丸は大きくため息をつくと共にがしりがしりと後ろ頭を掻く。
「わかった!あいつを抑えればいいんだな。」
「鶴丸!」
加州は鶴丸を睨め付ける。
「はい。出来れば援軍が来ない今の内にお願いします。」
レンは意に介さず話を進める。