第52章 審神者代理
「だから、奥脇が次に命令してくることは、あなたの身柄の引き渡し、或いは騙して拘束、だと思うわ。」
「その命令を無視したらどうなるんだ?」
薬研が尋ねる。
「私への圧力を強めるわ。具体的には任務の差し止めと減俸。そして政府への出頭が求められるでしょうね。」
「出頭してどうするんだ?」
厚が尋ねる。
「わからないわ。けど、拘束して改心させようとするんじゃないかしら。方法は知らないけれど。行いが酷い審神者にはそういった措置を取ったケースもあったみたいだから。」
「何がそんなに邪魔なんですかね。」
レンは不思議そうに首を傾げた。
お偉方の考えることはいまいちわからない。
「逆に聞くけど、もし奥脇から意に沿わない命令が来ても、あなた従える?」
七海は呆れ顔で尋ねた。
「例えば?」
「そうね…。
審神者の地位の確立と引き換えに、審神者として受け取れる報酬の5割を差し出すこと。
出頭命令にはいついかなる時でも応じ、会合などの手配及び接待を申し付けることとする。
と言われたら?」
考え考え言いながら、七海はレンを見る。
「何ですか、それ。本当にそんな命令出るんですか?」
レンは嫌そうに顔を顰めながら聞き返す。
「無理難題をふっかけて命令違反や規約違反をでっち上げるくらいしそうだけれどね。」
はぁ、と七海は少しため息をつく。
「でも、喜んで従う人もいるわよ。審神者になれるなら、その地位を守れるなら、と。
実際、知り合いで何人かいたのよ。
逆に命令を聞けなかった子は、いつの間にか消えていた。主従の契りを解呪できる方法があるのかはわからないけれど。」
「つまり死んだかもしれないってこと?」
加州が険し気な様子で尋ねる。
「あり得ることよ。」
七海は思い出しながら答える。
「反吐が出るぜ。」
太鼓鐘は顔を顰めた。