第52章 審神者代理
「私は審神者代理で来ました、さゆりです。」
広間に集まった面々を、淡々とした表情で見渡しながら、女は自己紹介をする。
「知っているとは思うけれど、刀剣は審神者の統制が必要な為、正式な審神者が決まるまで私が代行をすることになりました。よろしくお願いします。」
「要らない。必要無い。」
加州が無表情で言い捨てる。
どうしてもレン以外の人間は目障りに感じてしまう。
「本丸には審神者が必要不可欠よ。あなた達も神気が無いとその姿を保てないわ。」
さゆりは気にした様子もなくそう言って、腕時計を見る。
「今日はもう中途半端な時間だから、明日からにしましょう。今日の内に編成を決めておくわ。何か希望はあるかしら?」
そう言っても誰も答える者は誰もおらず、彼等は頑なにさゆりと目を合わせない。
彼女は小さくため息をつくと、他の質問に切り替える。
「ところで、審神者の住居棟はどこなの?」
その問いかけに彼等は互いの顔を見合わせる。
どれも、教えるべきか教えないべきか、考えあぐねている様子だった。
さゆりは命令するでもなく、じっと答えを待つ。
「…敷地の真ん中に歩いて行けば見えてくるよ。出来たばっかだからすぐわかる。」
見かねた加州が渋々答えた。
「そう。わかったわ。」
さゆりはそう言って、広間を後にした。
その間、彼女は魂縛りの呪を一度も使わなかった。