第32章 本丸跡地で
燭台切が用意してくれた軽食をぺろりと平らげると、彼等と共に大広間に向かう。
あれだけ綺麗に設られていた、雅な建物は見る影もなく、無惨に焼け落ちている。
「すごい不思議だったんだけど、レンちゃんの気を感じ取るあの男。なんで真っ先に大広間を狙わなかったんだろう?」
燭台切は心底不思議そうに話す。
「あぁ。それでしたら私が結界を張って寝ていたからだと思いますよ。」
「え?あの見えなくなる結界?」
燭台切は驚いて聞き直す。
「はい。更に内側に外界から完全に切り離す結界を張っていたので、見えないし感じなかったんだと思います。お陰でこちらも異変に気付くのが遅れましたが。」
少し悔しそうにレンは答える。
「どういうこと?」
事情を知らない大和守はレンに問いかける。
「あぁ、大和君は知らなかったよね。
実は2、3日前にね…」
燭台切が掻い摘んで話す。
「よく、そんな奴に立ち向かって行こうと思ったね。レンって意外に喧嘩っ早い?」
大和守は呆れた様にレンを見る。
「そうそう。安定、もっと言ってやって。」
加州が大和守を煽る。
「失礼な。奴を野放しにしたら、今ここにいる全員が死に晒されるんですよ。賢明な判断だと私は思っています。」
レンは少しムッとして加州に言った。
「いやいや、先ずは相談しようよ。」
大和守が即行で突っ込んだ。
「そんな時間あると思ってるんですか。」
「大丈夫!レンなら出来る!」
「何を根拠に言ってるんですか、あなたは。」
励ます様に言う大和守に、レンは呆れ顔で答える。
「まぁ、でも一理あるかもね。僕達は曲がりなりにも刀剣だ。少しは頼ってほしいと思ってるんだよ。」
「そうそう。守るべき人に守られるって結構プライド傷つくものなんだよ。」
加州が半眼でレンを見ながら燭台切の言葉に続く。
「まだ根に持ってるんですか。まぁ、善処します。」
会話が切れた時、丁度、大広間に着いた。
「本当に綺麗に残りましたね。端側にあったのが良かったんですかね。」
「審神者の住居棟から狙われたみたいだからね。ここはそこから一番遠いんだ。」