第29章 急襲
「俺達が裏門から出る前に、五虎退が呼びに行っているが。」
「…遅い。もしかして何かあったんじゃ。」
「何かって…、じゃ五虎退は…」
「薬研兄さん!」
そこへ噂の五虎退が飛び込んできた。
「五虎退、無事だったか!大将は?」
「逃げ遅れた人がいないか確認してから来るって、残ってしまって…。僕も主様の分身さんと一緒に遡行軍をなるべく引き付けながら逃げて来たんです。」
「やっぱり…。あの子は危ないことを…!」
五虎退の言葉を聞いた燭台切の旦那は顔を覆ってしまった。
「おい、あれそうじゃないか?戦闘になってるぞ…!」
大倶利伽羅の旦那が指さす方向で確かに激しい戦闘になっている。
「すみません、遅れました。」
その時、五虎退の姿をした当の本人が来た。
「大将、無事だったか。」
俺はほっと胸を撫で下ろした。
「いいえ。私達は影分身です。大和さんと加州さんをお願いします。」
「だから、俺も戦う…」
「ダメったらダメです。聞き分けのない人ですね。」
大将は加州と何やら言い合っている。
「なになに?何の話?」
乱が興味津々に大将と加州を見比べる。
「何でもありませ…」
「この人、一人で残っちゃったんだよ!怪しい男の足止めをするって!」
大将は行儀悪く舌打ちをする。
「…そういうことですので、今から結界を張りますから、みんなそこから出ないでくださ…」
「ちょっと待って。それってもしかして君の分身を見破った奴じゃないの?」
大将の言葉を遮って燭台切の旦那が問いかける。
「…そうです。なので、万が一の…」
「君って子は!何で危ない所に首を突っ込むんだ!」
「何で、と言われても…。」
大将は燭台切の剣幕に不貞腐れる。
「燭台切の旦那が正しい。これは問題案件だ。」
俺も旦那に賛同する。更に言おうと口を開いた時、大倶利伽羅の旦那が大将を呼んだ。
「お前、やられてないか?」
その言葉に俺は血の気が引いた。
慌てて姿を探すと、刀を突き立てられている。
「不味いぞ…!」
「やっぱあんたやられてんじゃん!」
加州が悲鳴をあげる。
大将は首を掴まれ、持ち上げられていた。