第29章 急襲
「で、あんたは何者だ?」
加州を見送ったレンは、男を睨み付けながら問いかける。
「何者とは、また随分だね。」
黒髪に赤目でコートもスーツも真っ黒だ。
背後に燃え盛る炎を背負っている様で、逆光が余計に不気味だ。
この男は、この前の青年で間違いないだろう。
江雪が言うように、刀剣男士に近い雰囲気がする。だが、青年から漂うそれは禍々しく得体が知れない。
出来れば関わり合いになりたくはないが、そうも言ってはいられない。
「この大軍はどこから連れてきたんだ?」
「連れてきたわけじゃない。ここで作ったんだ。」
「どうやって?」
「気になるか?」
青年はニィと嫌な笑いを浮かべる。
言わないつもりだろうか。
ーダメ元で煽ってみるか…。
「質問を質問で返されるのは好きじゃないんだ。
どうせ、碌な答えが返ってこない。お前が連れて来ていないんだったら、政府だろう。」
青年はつまらなそうに笑顔を引っ込めた。
「お前には何も出来やしない。」
レンは態と貶める様なことを言う。
「口が悪い奴だな。でもそういう奴を手懐けたらどうなるか…。それはそれでワクワクする。」
青年は目を見開きニタリと笑う。その目は爛々と輝いて見える。
レンはあまりの気持ち悪さに、一歩下がった。
「へぇ、僕が怖いの?怖いよね?人間だもの。さて、どうやって甚振ってやろうか。」
青年は構えを取る。
「…気持ち悪い奴だな。如何にもイカれた野郎の発想だな。」
レンもそのまま構えを取り、迎え撃つ準備をする。
青年は地を蹴ると同時に刀を抜き、横一線に薙ぎ払う。
ー速い。
紙一重でレンは太刀筋を躱した。
右へ左へと滅多矢鱈と刀を振り回している様にも見えるが、その一手一手は確実にレンの急所を狙う。
ーこれは、簡単には逃げられないかもしれない…。
レンもクナイで応戦するが、相手の刃と自分の刃では長さの上で不利だ。