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君に届くまで

第29章 急襲


レンは急いで加州の元に走る。

途中出会す異形のモノ達は、レンを見ると光に集う虫の様に集まってくる。
その気配は、禍ツ神そのものだ。体中から黒い靄を吹き出し、目は赤く鈍い光を放つ。
それらを全て氷遁で捩じ伏せ、止めを刺す。
どうやら奴らの弱点は”刀”らしい。折ると、灰のようにぼろぼろと崩れ消えていく。

ー…まるで刀剣達の様だ。

加州の部屋に近づくにつれ、敵の数が多くなってくる。
時々、鍔迫り合いの様な音が聞こえるのは、加州だろうか。だとすると急がなければ。

最後の曲がり角を曲がると、見えた。
状況は明らかに劣勢だ。加州は異形のモノ達に囲まれ、膝を突いている。
加州の背後に振りかぶるモノが見える。
間に合うか。

「氷遁、氷柱槍!」

レンは目一杯の力で槍を投げる。
放った槍は、真っ直ぐ隙間を縫う様に飛び、振りかぶった異形を捉え、そのまま弾き飛ばした。

ドカン!!という衝撃音と共にその異形は腹を差し抜かれ、柱に釘付けとなる。

「風遁、烈風掌!」

レンは逆巻く激しい風を起こし、辺りの異形を一気に吹き飛ばす。

「すみません、遅くなりました。」

「…え、五虎退じゃないの…?」

「レンです。五虎退の姿を借りたんです。大和さんはどこですか?」

加州は呆気に取られながら部屋の中を指さす。

「暫く踏ん張っててくださいね。」

レンはそう言うと、ロープを取り出し、大和守を芋虫の様に布団ごと縛っていく。

加州は、呆然としながらレンを見ていると、時間遡行軍に横から斬りかかられ、なんとか躱す。

レンは、最後に大和守の刀を布団の中に差し込むと、彼を抱き上げた。

「行きますよ。走ってください!」

そう言うと、彼女は凄い速さで走っていく。
人一人抱えているとは思えない速さだ。

「え!?ちょっ!待って!」

レンの攻撃の避け方は実に曲芸的だ。
右へ左へ剣技を躱し、上へ飛び上がり下へ潜り込んで足技で敵を退けていく。
加州は応戦しながら着いていくのがやっとだ。

裏門まであとちょっとというところでレンが突然止まる。
加州は急に止まれず、彼女に体当たりしてしまった。

「ちょっ、急に何!?」

レンに動揺が走る。

ーこの気配は…。

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