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君に届くまで

第84章 新たな拠点、新撰組




レンが土方についていくと、昨日とは違う座敷に通される。そこには近藤、山南の他に知らない人が一人座っていた。
側に置かれた刀を見るにこの人も武士なのだろう。
その人は、レンを見るなり瞠目する。

「やぁ、氷室くん。よく来たね、さあ座って座って。」

朗らかに笑いかける近藤に会釈を返し、促されるまま空いている席へと腰を下ろして刀を抜く。
土方が座ったところで山南が「では、」と話を切り出した。

「この度、近藤さんの預かりとなった氷室くんをご紹介致します。」

山南の目配せを受けて、レンは名前の知らない男に目を向けて、軽く黙礼する。

「氷室レンです。」

名を名乗ると、その人は興味深そうにしげしげとレンを見る。
その視線は決して居心地がいいとは言えないが、レンはおくびにも出さず、じっと耐えた。

「この方が昨日の一件の?」

その人は名も名乗ることなく、レン以外の面々に顔を向ける。
それに若干の苛つきを覚えながらも、黙っているのが吉とみて、正面に向き直った。

それに気づいてか、その人はくすりと笑ってから、

「あら、ごめんなさいね。私は伊藤甲子太郎といいます。以後お見知り置きを。」

レンは小さな意趣返しに黙礼に留める。
伊藤はそれに気を悪くした風もなく、再びしげしげとレンを見始めた。

「人は見かけによらないんですね。こんな小柄な子が化け物を倒すだなんて。」

何で知っているんだろう、とは思ったものの、迂闊には聞き返せない。これはレンにとって避けたい話題だからだ。
言い様によっては、相手に更なる情報を与えかねない。

「あら、緊張してるのかしら?何も仰らないの?」

「…特には言うことが無かったので。全ては仲間の功績ですから。」

レンは言葉に気を付けながら会話を繋げる。

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