第81章 幕末へ
桶や樽、木板や柵…。
一見するとゴミかと見紛う程物がごみごみと置かれている路地を、物を避けつつ先へと進む。
抜けきった先は長屋の表らしく、通りに面して左右に締め切られた玄関の戸がちらほらと見える。
「ほら、もうどこかに行っちゃったんだよ。」
大和守は早く戻ろうと言わんばかりに、来た道をちらちらと見つつ周りに目を向ける。
レンは通り沿いに視線を走らせながら先程の男達の痕跡を探すが、手がかりらしい手がかりは見つからない。
「ね、帰ろう。」
おかしいな、と思いつつ手を引かれながら来た道を戻ろうと路地に入る。
すると、バタン!と遠くで戸が乱暴に開けられる音が響いてきた。
おそらくは、この長屋の通りの何処かだろう。
何かを言い争う様な声も聞こえてきた。
二人は顔を見合わせ、路地からそっと顔を出して様子を伺う。
すると、遠目に浅葱色の羽織を着た侍が数名いるのが確認できた。袖には白のだんだら模様が入っている。
「安定の戦装束と同じですよね?」
レンが振り返ると、大和守は目を瞠り驚きながら、遠くの彼等を見ていた。
「あれ、新撰組だよ。」
「あれが…。」
レンは、再び遠くに見える浅葱色の羽織の集団を見る。
何か大声で言いながら断りもなく勝手に戸を開けて中を確かめている様は宛らヤクザである。
あれは煙たがられるだろうな、とレンは密かに思った。