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君に届くまで

第81章 幕末へ





さらさらさら…


聞き覚えのある音に薄らと目を開けると、冷たさと共に視界に雪が舞う。
降り出したばかりの様で、地面は所々黒や茶色が透けて見える。

「寒い…。」

レンはあまりの寒さに思わず体を縮めて両腕を抱えた。

「ほんと、さむ!」

「何でいきなり雪!?」

加州と大和守も両腕を抱えながら、ばたばたと足踏みをする。

「レンちゃんじゃないけど、確かにこれは寒いね。」

燭台切も腕をさする。

「寒すぎる…。」

「今、何月なの!?」

堀川と乱も身を寄せ合って、がたがたと震えながら身を縮める。
雪が降るくらいだ。冬である事は間違いない。

「おそらくは池田屋事件の半年前、一月か二月か。その辺りでしょうね。」

レンは何でもない事の様に言うが、

「…先に言っといてよ〜…。」

事前に知らせてほしいものだ、と皆は心の中で思う。
知っていれば少なくとも心構えは出来ていただろう。

「とにかく街に下りましょう。ここにいては凍え死にます。」

レンは、がたがたと震え出した体を宥めながら歩き出した。

「…それもそうね。宿取らなきゃ今後にも差し支えるし。」

「あったかいとこ行ってあったまろ。」

加州と大和守は、切り替え早くレンについて歩き出した。

「…も〜、しょうかないなぁ…。」

大和守の手招きに乱が歩き出し、苦笑し合った燭台切と堀川が動き出す。



時は1864年、年号にして文久四年。
その年の1月31日。

池田屋事件まで、あと五ヶ月…。

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