第80章 五稜郭にて
ある日の昼下がり。
審神者部屋では、いつもの様に部屋の主とその近侍が雑務に勤んでいた。
「レン、手紙が来ているぞ。」
本日近侍である山姥切が政府から届いた手紙をレンに手渡し、受け取った彼女は手を止めて封を開ける。
「……。”○月×日、政府棟五稜郭1-Cにて緊急説明会を行います。各審神者は必ずご出席いただきますよう、お願いいたします。”」
声に出して読んだレンは、怪訝な顔で首を傾げた。
緊急の説明とはどういうことだろう、とは思うが、それ以上の説明がなく推理のしようがない。
ー面倒だな…。
レンは欠席しようと考えていたところ、
「レン、電話だ。」
手渡されたスマホの画面を確認すると、七海からだった。
彼女は画面をタップして、通話にする。
「もしもし。」
『久しぶりね、調子はどう?』
「まずまずです。変わりありません。」
『そう、良かったわ。いつも通りが一番よ。』
そう言うと、七海は一度言葉を切る。
『単刀直入に言うわ。明日の説明会、必ず出席してちょうだい。』
何の説明も無く結論だけを言う七海に、若干不信感を抱いた。
「…何故、態々言いに?」
思わず問い返すと、七海から少し笑いが溢れた。
『相変わらず疑り深いわね。まぁでも、あなたの疑いは強ち間違いではないわよ。それも明日全て話すわ。とにかく現状を知ってほしいの。その上で手を貸してちょうだい。』
あくまで内容を話そうとしない七海に、レンは早々に諦める。
「分かりました。明日、必ず出席します。」
『ありがとう。待っているわ。』
その言葉を最後に通話が途切れた。