第78章 番外編1
レンは上着の袖を通し、裾を合わせて冷気を防ぐ。
そして、部屋の方に歩き出そうとした時、
「レン。」
鶴丸に呼び止められ、手を取られる。
何だろう、とレンが振り返った瞬間、ふんわりと抱きしめられた。
次いで、鶴丸の匂いが彼女を包み込み、一瞬で息を呑んだ。
「…おやすみ。」
鶴丸は一言そう言って、すっと身を離して歩いて行った。
「おやすみなさい…。」
レンは驚き過ぎて、暫しその場で固まったまま鶴丸を見送った。
ーびっくりした…。
レンは内心ごちながら自室へと向かう。
鶴丸には悪戯を仕掛けられることが多いが、驚いたことは殆ど無かった。
案外シンプルなのが一番びっくりするものなのだろう、とレンは思うのだった。
〜fin〜