第78章 番外編1
「…二度とやらないと誓うなら、今日の事は水に流します。」
その言葉を聞いた鶴丸はそろりと三日月の後ろから顔を出す。
三日月はくすりと笑いながらタオルを渡し、鶴丸は苦笑しながら受け取った。
そして、ごしごしと顔のペイントだけ落とすと、おずおずとレンの前に歩み寄る。
「あの…。ごめん、な…。」
「もう二度とやらないでください。肝が冷えました。あんな思いをするのは御免です。知っているでしょう?」
鶴丸は大きく頷く。
レンと、その兄妹であるリヨクとの因縁を間近で見ている鶴丸は胸を痛くする。
それと同時に、自身を案じてくれるレンの想いがとても嬉しかった。
「悪かった。」
鶴丸はそう言ってレンの手をぎゅっと握る。
レンは、怒りを全て追い出す様に短く息を吐く。
忍の世界でも、使える手は全て使うのは常識中の常識だ。
「もう、この件は終わりって事で。賭けは私の負けですね。」
レンは微苦笑を浮かべて鶴丸を見上げた。
鶴丸曰く、怒ったレンは般若の如く怖かったそうな。
「まぁ、そのお陰で勝てたけどね。」
「怪我の功名ってやつだね。」
「…他人事だと思って…。」
鶴丸は、淡々と言う加州と乱をジト目で見ながら肩を落とした。