第76章 おわりのおわり
「ここは正真正銘、本当の本丸だ。」
「大将は帰ってきたんだよ。」
薬研も鶴丸の隣に並んだ。
だが、レンは信じられずに、困惑して目を瞬かせた。
「レンはチャクラ切れっていう症状でな。術が解けてからもずっと目を覚さなかったんだ。」
「その間、木の葉ではずっと治療してもらってたし、俺達も凄く良くしてもらったんだ。」
鶴丸と薬研は柔らかに笑いながら、レンが眠り続けていた時のことを話した。
「ナルトとも話したんだ。それで、キミのことを聞いたぞ。顔岩にも連れてってもらったしな。」
鶴丸は薬研を見ると、薬研も鶴丸を見て少し吹き出した。
「お色気の術っていう何ともハレンチな術も見せてもらったしな。」
「あれはなぁ…。参った参った。」
鶴丸は、思い出しては少し頬を染めて掻いた。
「…本当に…、夢じゃない…?」
夢とは異なる彼等の言葉に、レンはじわりじわりと戻った実感が湧いてくる。
それと共に、冷え切っていた体に血が巡るように、徐々に手指の感覚や本丸の匂いが敏感に感じ取れるようになった。
レンは、穏やかに微笑んで自身を見つめる彼等を見回した。
次いで、目の前の鶴丸に目を向ける。
鶴丸は両手を握り、朗らかに笑う。
「お疲れ様。そしておかえり、レン。」
レンの瞳から、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
じわりじわりと生の感覚が染み込んでいく。
夢じゃない。
嘘じゃない。
誠のうつし世。
彼等は代わる代わるレンを撫でた。
レンは顔をくしゃくしゃにして泣き、しゃくりあげる。
帰って来れた。
みんながいるこの場所に。
「ただいま…!」
ここが私の居場所。