第2章 憧れの人〜ドリノベVer〜
モモさんに告白するつもりは毛頭なかったが、私がモモさんの隣を歩く事は一生ないのだという事実にまた頭が真っ白になる感覚がした。
「あいちゃん…?」
赤ネイルの理由を聞けたが、再び目頭が熱くなってきた。
「じゃ、じゃあ私はこれでっ…お疲れ様でしたっ…!」
こんな所で泣きべそをかくワケにはいかない。
楽屋を出ようと立ち上がると、モモさんに手を掴まれる。
「…は、離して下さいっ…」
「何で…?ユキにもそう言ったの?」
「…ユ、ユキさんには言ってません」
「何でユキはよくて俺は駄目なの…?」
「…ち、違いまっ…」
そうじゃないんです…
「…なんで泣いてるの?」
「ご、ごめんなさ…っ…」
「…謝んないで、こっち座って?」
モモさんが優しく言葉を掛けてくれる。
泣いている所を見られたくもなければ、その理由すら話せない。
涙が止まらなかった。
「…その爪さ、超似合ってる」
「へ…?あ、ありがとうございます…」
「今日はなんで赤いネイルなの?いつもはもっとシンプルなやつでしょ?」
「三月さんにも言われました…」
「…そういえば、三月と朝何話してたの?」
「へ?」
三月さんと朝って…
モモさんがあのモデルさんと話してた時…?
「な、なんで知って…」
「…良いから答えて」
なんかモモさん機嫌悪い…?
「み、三月さんにも赤いネイルが珍しいって言われて…三月さんもネイルに興味があるってお話を聞いて。それで今度私のマニキュアを貸す約束を…」
そこまで話すと、急にモモさんが自分のリュックをガサゴソ漁り始めた。
そこから取り出したのは、何色かのマニキュアだった。
「これ、三月に渡して…」
「え…?」
「これ俺の予備のマニキュア…だからあいちゃんのマニキュアは三月じゃなくて俺にちょーだい?」
な、何で…
「…い、イヤです」
「え…?」
「…モモさんのマニキュア、私が欲しいです」
「へ…」
「っ…!」
し、しまった。
ついファン心理が働いて…
「じゃ、じゃあどうぞ…」
「え…?あ、ありがとうございます…」
な、何やってんだ私はっ…!!
でも嬉しいっ…!
引かれなくて良かった…