第13章 ❄️️ 記録と活用
正面からビルに足を踏み入れる轟。そして、先程と同じく氷の個性を解放する。
一瞬で氷の世界と化すビル内。
「いいぞ、八百万。」
「はい!」
自身の個性で作りだした防寒具を身につけた八百万もビルに入る。
1階は部屋のない広い空間。あるのはビルを支える太い柱だけだ。
「これで身動き取れてるとは思えねえが、一応用心しとけ、八百万。」
「ええ!心得ておりますわ。」
先の対戦で見た常闇の個性はかなり強力だった。このビルごと凍らす作戦に対して何かしら対策を立てている可能性もあるため、万が一氷に足を囚われず動ける状態なのであれば強敵である。
対して雪は恐らく雪の結晶を作り、操る個性。轟の氷に比べればなんてことはないが、だからこそ不意打ちを仕掛けてくる可能性が高い。
「一階にはいねえな。」
「そうですわね。隠れられる場所は柱くらいですわ。」
「それに見ろ、八百万。」
「……!!」
轟が視線を向ける方角は2階への階段。その前に、幾多もの輝く雪の結晶が浮いている。
「あれは雪さんの!」
「バリケートのつもりか。」
「ここは私が。」
そう言って八百万は、長い棒を生成する。
2人で近くの柱に身を隠しながら、結晶のひとつに棒で触れてみる。
すると、パリン!という音を立てて結晶はいとも容易く壊れ落ちてしまった。
「なんだ、脆いな。」
「動けなくなることを見越しての時間稼ぎで、逃げ切るつもりと見るのが妥当ですわね。」
柱の影から出て階段へと近づき、残りの結晶も腕で払うと2人は階段をのぼる。
八百万の予想は確信に変わる。
2階へ上がると、いっぱいの雪の結晶が浮いていた。
「用意周到なこった。だかこの量だと昨日やってたように動かしたりはできねぇらしい。」
「ええ。ですが場所の特定が出来ない以上、1箇所1箇所見なければ行けませんわね。」
「襲って来ねぇなら楽勝だ。」