第11章 ❄ 口喧嘩?、クッキー、最下位。
『ごめん、とどろき。覚えた。』
「動けるのか。」
表情を崩さす、しかし僅かに首を傾けて問うてくる轟。
『うん!ちょっと重かっただけなの。私、寮だからすぐなんだ。だから平…「貸せ。」
えっ、と戸惑っている間に、彼は雪の手から教科書を奪い取り、女子寮の方へと歩き出していた。
『あ、待って!』
慌ててついてゆく雪。
何も言わずにスタスタと歩く轟、この少年は 先程自分と怒鳴り合っていた爆豪とは正反対のタイプらしい。
『とどろき!えっと』
「寮ぐらいまでなら運べる。」
『でも、』
「ふらついてたぞ。無理すんな。」
『それはちょっと勢いを間違えただけで…』
途中で口をつぐみ、諦める。
前を見たまま歩くスピードを変えない彼にこれ以上言っても無駄だと理解する。そして素直に甘えることにした。
『ありがとう。とどろき優しいね。』
隣を歩きながら首を斜め上に向けてそう述べた雪を、轟はちらりと見るが、直ぐに目線を逸らす。
「……………別に普通だろ。」
『それにクールだね。』
「………………。」
無表情の顔が、僅かに反応に困っているような顔に変わる。
それを見て雪は、少し微笑む。
『中学より教科書、多いね。』
「そうだな。」
『……………………。』
「……………………。」
まぁ、無理に会話続けることもないかと思った雪は話しかけるのをやめ、前を見て歩く。寮はすぐそこだ。
『わざわざありがとね。』
女子寮の入口で教科書を受け取り再度お礼を言うと、轟はああ、じゃあな、と言って直ぐに背を向け帰って行った。
彼はもう振り返らないだろうと踏んだ雪もまた、すぐに寮の中へと入って行こうとしたが…
『あ!とどとき!!ちょっと待って!待っててね!』
轟がびっくりして振り返ったのを確認すると、雪は寮に入り、急いで自室へと向かった。
ぽかんとして雪が入っていった女子寮の玄関を眺める轟。
「…………そんなに言いづらいか?」