第11章 ❄ 口喧嘩?、クッキー、最下位。
一瞬、きょとんとした顔を見せた雪。
すぐに、ふふ、とはにかみ返事をする。
『みどりやがそう言ってくれるなら、私もみどりやに声掛けて良かった。』
嬉しそうな笑顔で。
「……………………」
彼女から溢れ出る暖かい何かが緑谷の思考を完全に停止させ、ぽっ、と頬を染める。
『したっけ、また明日ね!』
ばいばーい
そう言って教室を出てゆく雪を、緑谷は何も言えずに見送ることしか出来なかった。
❄❄❄
『はあぁ、重い…………』
生徒玄関から出て少し歩いたところで数冊の教科書を抱えたまましゃがみ込む雪。
彼女は先程緑谷に、自分では大したことないと思っていたことを 律儀に真正面からお礼を言われたのが小恥ずかしく、教室から玄関まで駆け足で来ていた。そのためもう疲れてしまったのだ。
近くてラッキーとか思っていた5分前の自分に言ってやりたい。
お前はチビだから例え近くてもしんどいぞ、と。
そして、廊下は走るなよ、と。
たった数百mの寮までの道のりがとてつもなく遠く感じられ、絶望し立ち上がれずにいる雪に気が付いたのは。
「……気分でもわりぃのか。」
『あ!いや…!』
後ろからそう声をかけられ、勘違いされてしまった、と慌てて立ち上がる。
が…
『うわわ、』
背負う鞄の重たさにバランスを崩す。
手にも抱えているため立ち直れない。
倒れるっ…………!
(倒れてない。)
ぽん、後ろから両肩を掴まれ、雪の転倒は容易く阻止された。
(またやってしまった)
そう思いつつ、2つの手に預けていた体重を取り戻しその手の主は誰だろう、と振り返る。
『ありがとう…』
右と左で赤と白の髪。青い目と黒い目。
その特徴的な容姿を持つ少年を、雪は勿論、覚えていた。
無表情でこちらを見下ろしている。彼の名は、
『ととろぎ。』
ん、あれ?
『とどろぎ?』
「…………とどろき。」