第11章 ❄ 口喧嘩?、クッキー、最下位。
怒鳴られているにも関わらず、楽しそうににこにこしている雪。
それを見てさらにいらいらを募らせる爆豪。
青い顔で震えている緑谷。
爆豪はもう、鞄を持ち上げて帰る準備万端だ。
それに気付いた雪は、それじゃあまた明日ね、と胸の前で軽く手を振る。
(え、終わった?)
突然の雪の挨拶に戸惑う緑谷には目もくれず、チッとあからさまな、舌打ちを残して爆豪は教室を出ようと歩き出す。
『したっけ~』
まだ呑気に呼びかける雪。
(っせーな、何だあいつ!!意味わからん言葉発しやがって!!)
教室を出てもイライラは治まらず。
(クソナードと仲良しごっこしてやがれ)
玄関を出て、校門を潜り、帰路に着く爆豪はふと、思い出す。
彼もまた、個性を使った雪に目を奪われた者の一人だった。自分のとは違う、繊細な個性だと 思った。
そして朝、自分と眠る彼女しかまだ教室にいなかった時。
窓から春風が入り込み、ふわりとなびいた白髪の内側、一瞬見える寝顔。長いまつ毛。
2度も、彼女を綺麗だと思った。不覚にも。
「クソが。」
「はぁ、どきどきした…」
『みどりや、爆豪のことかっちゃんって呼んでるんだ。』
「あ、うん。」
爆豪がいなくなっても雪のマイペースなお喋りは続く。
『知り合いなのにみどりや、凄く怖がってる。どうして?』
「あー、かっちゃんは幼なじみなんだけど、その、ちょっと色々あって…」
幼なじみ!いいね!と言いながら彼女はリュックを背負い、入り切らなかった数冊の教科書を腕に抱える。
『みどりや、おつかれ。私も帰るね。』
「あ、待って雪さん!」
動き出そうとした雪は ん?と足を止める。
「今日、ありがとう。ボール投げの時、励ましてもらって僕、少し落ち着けたんだ。1回目はダメだったけど、2回目はちゃんと冷静になれた。」
その時の雪さんには悪かったけど…!と付け加えて、緑谷は頭を搔く。