第10章 ❄ 冗談じゃない!
雪は焦っていた。
除籍処分?冗談じゃない。せっかく、せっかく合格したのに。
しかし自分の個性は体力テストにかなり不利。
(プルスウルトラプルスウルトラ…)
「じゃ、行くぜ。」
『うん。頑張って。』
第2種目 握力。
瀬呂はテープの力を使い307キロという記録を出す。
「おっし!!」
『スゴイネー』
(落ち着け落ち着け、大丈夫。チャンスは一回ある。取り敢えず、今はできるだけ、いい記録を残して最下位になる確率を少しでも低く…)
「じゃ、次雪なー。…………25キロっと。なぁ、雪ってどんな個性なんだ?」
何気なく尋ねる瀬呂。
雪はうっ、と小さく声を漏らす。だが、
『使ってからのお楽しみ!』
至極冷静を装う。
雪と同じく、焦る生徒がもう一人。
立ち幅跳び、反復横跳びと続き、周りのものは既に何か一つは大記録を出している。
雪零と緑谷出久。
((このままだと、最下位……!))
他の生徒たちも、未だ個性を見せない2人に自然と注目している。心配しているのか、安心しているのか…
実技試験で巨大ロボットの無力化を成功させている2人。
相澤もまた、この2人に目をつけていた。
一人は出力コントロールのできない少年。
もう一人は、この場でもっとも不利な立場にいる少女…
さて、どう乗り越える…?
第5種目 ソフトボール投げ
雪の順番が回ってくる。