第18章 ❄️️ 名前
緑谷が殴っていたのは、死柄木ではなく。
(速っ…いつの間に…ていうか…効いて…ない…!?)
「いい動きをするなあ…。スマッシュって…オールマイトのフォロワーかい?」
ガシッ
それ以上動くことが出来ず、緑谷は化け物にガッチリと腕を掴まれる…。
グサッ
死を覚悟し、目を瞑った。…すると聞こえたのは何か鈍く生々しい音と、耳をつんざくような叫び声。それと同時に腕が開放される。
『はぁ…っ』
「っ…!!」
(え、雪さん…?)
緑谷が目を開けると、彼の前には華奢で、小さな、白い少女が立っていた。俯き、肩で息をして。左手に長い槍を持ち、目の前の、自分よりも何倍も大きな化け物の胸に突き刺している。
「は?お前どこから…」
その場にいる誰もが、彼女の姿を信じられないといった目で見る。
死柄木でさえ。
彼女が緑谷の前に出てくるまで全く、''見えなかった''。
叫び声をあげる、死柄木が''脳無''と呼ぶ化け物が1歩、後ろへ下がると、少女は槍を手放す。
その白く輝く槍が、パッと消えたかと思うと今度はその切先が死柄木の喉の前に現れた。
「っうわ」
彼女は全く動かず、槍だけが急に現れたためギョッとする死柄木。
動けずにじっと、その少女を見る。
緑谷、蛙水、峰田はその間に少しの距離を取った。
(雪さん、凄い怪我してるのに…!)
ぽと、ぽとと、腕や頭から血が垂れているのを、少しづつ広がっているワンピースの赤い染みを見て、緑谷は、顔を歪める。
(でも…なんだろう…、いつもと雰囲気が…)
俯いていた彼女が、ゆっくりと顔を上げ死柄木を睨みつける。
「ほのかちゃん、変だわ。目の色が…」
蛙水も違和感に気付き眉を顰める。