第18章 ❄️️ 名前
「は、ははっ、殺った…」
ヒクヒクと、口角をあげながら一歩、二歩、後ずさった。その時。
「っ!」
激しく降り注いでいた雪が、ぴたりと止まる。
「な、何だ…」
よく見ると、その中に。見たこともない大きな、10cm程の雪の結晶がいくつか一緒に浮かんでいる。
それは、美しかった。
「あ…」
男が目を見開いてその結晶の一つに、手を伸ばす。
指先が、触れた瞬間。
「っは?」
その結晶の鋭い枝が、男の手の甲から肩にかけての皮膚を切り裂きながら凄いスピードで動き出す。そして…
「ぎゃああああああ!」
両目を抑え、暴れ回りながら辺りの雪を赤く染めている男に。
一瞥をくれることも無く、それよりも薄い色の目を光らせた少女は、広場の中心へとゆっくり歩き出した。