第18章 ❄️️ 名前
『うっ…』
「っ!当たった!!」
手から超高速で雪玉を連続発射させることのできる個性。
ホワイトアウト現象のせいでよく見えないが、倒れた部下の近くでちいさな影が膝をついているのが確認できる。
雪玉の男と、もう1人残った男がそちらへ駆け寄ると、そこに。
白いワンピースを所々、じわりと赤く染めた少女が、膝をつき、俯いて呼吸を荒くしていた。
「ははっ、大人しくしてりゃいいのによォ、歯向かうからこーなんだよ…」
「もう暴れるんじゃねえぞ…」
もう1人の、大柄な男がオオカミ男の様な姿に変身し、少女の細い首を掴む。
『ぐっ…あ…』
少女は苦しそうに喘ぎ、首からは男の鋭い爪により血が流れた。
「ここまでやってくれたんだ、殺しちまえ。」
リーダー核の男がこめかみに青筋を立てながら、にやりと笑う。
「なんか言い残すことはあるか?嬢ちゃんよォ」
『…るさ…ない…』
「あ?聞こえねーよっっ!!!」
オオカミ男が座り込んでいた少女の体を高く持ち上げ、トドメだと、もう片方の手の爪を大きく伸ばす。
『零を傷付ける奴は、許さない。』
「っ!」
持ち上げている少女の、薄桃色に光る目が、オオカミ男を睨みつける。
その美しい顔が怒りに歪んだ表情に変わり、彼がびくっと一瞬、たじろいだ瞬間。
「ゥ、ウガアァァァ!!!痛ってぇ!!!」
少女は白く輝く鋭い槍を、自分を掴んでいる太くて毛深い腕に突き刺していた。
首を掴んでいた手は離され、刺された男はうずくまり痛みに泣き叫ぶ。
「あ、あ…」
部下が刺され、リーダー核の男は。雪に倒れ込んだ少女に手を向けた。
「し、死ねええぇぇぇぇぇ!!!!」
ズドドドド……
雪玉を発射した先の雪が、その衝撃によって激しく飛び散る。
それらが全て落ちた後も、何も、動く気配がない。