第17章 ❄ フラッシュバック
動いたのは、3人。
1人はとてつもなく重たい生徒達の命を背負ったヒーロー、13号。
突然目の前に現れた脅威に驚きこそしたが、モヤが揺れ動いた時、反射的に自らの個性を発動すべく、グローブの先を開き、敵に向ける。
しかし、ほんの一瞬。原因はプレッシャーだろう。自分が1歩間違えれば、大変なことになる。悪いことでは無い、実践で最も気をつけなければいけないことの一つが焦りだ。慎重さから生まれてしまった、一瞬。
その一瞬が、同時に動き出したまだ純粋な、男子生徒2人と、13号との位置関係をひっくり返してしまう。
それを見た雪。曖昧とも言えないくらいの薄い薄い記憶が、彼女に恐怖を与え続ける。
『ばくごうっ!きりしまっ!』
ドガンッ
頭痛に耐えながら、座りこんだ状態で手を伸ばし名前を呼ぶが、その声は皮肉にも爆豪の爆発音にかき消されてしまう。
(届かないっ…、また、また私は…)
…失ってしまうの?
(行かないで、誰も、いなくならないで…)
『お願い…』
「…の前に………ことは……………ったか…」
切島が何か叫んでいるが、激しい耳鳴りで聞こえない。
頭痛に耐えきれなくなった彼女が意識を失う直前に見たのは、あの悪夢と同じ、黒い虚無が 自分等を覆い込んでゆく光景だった。