第17章 ❄ フラッシュバック
一目見て''それ''が何かを理解することは困難であった。
(黒い、もや…何だあれは…)
しかし''それ''が何かだなんてことはどうでもいい事だった。
(…っ!!)
重要なのは、''それ''が、何をもたらしてくるのか。その事に相澤は瞬時に理解し、動いた。
もやの中から、まずは手が。そして悪意に満ちた、目が、見えたとほぼ同時に叫ぶ。
「一かたまりになって動くな!!!!」
「え?」
「何だ?」
突然態度が豹変した相澤に、生徒達は戸惑うばかりだが、説明している暇はない。
「13号!!生徒を守れ!!」
「っ!!」
ただならぬ彼の声色に、13号も戸惑いいつつ身構える。
しかし経験のない多くの卵達には、下の広場にわらわらと溢れ出てきた彼等の姿を見ても事の深刻さを判断することはできなかった。
「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってるぞパターン?」
(何?何?見えない!)
背の低い雪には、周りの生徒達が邪魔になって何が起こっているのか見ることができない。ぴょんぴょんと飛び跳ねてみるが、視覚よりも先に、聴覚がその状況を彼女に伝えた。
「動くな!あれは敵だ!!!!」
(ヴィラン…?)
「13号にイレイザーヘッドですか…。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」
「やはり先日のはクソどもの仕業だったか。」
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ…」
低く、苛立ちを含む、不気味な声。
「オールマイト…平和の象徴…いないなんて…」
プロが何と戦っているのか。何と向き合っているのか。
その、途方もない悪意の篭った声で、彼がこう言った時。
「子供を殺せば来るのかな?」
生徒達も、理解した。
異常事態が、起こっているのだと。