第17章 ❄ フラッシュバック
ファサ……
バスを降りた時、髪に何か違和感を感じた。
『うわ。意外と柔らか…』
…違和感の正体は一瞬で分かった。
「何触ってんだてめぇ…」
バスの出口の横に避け、彼女がぴょんっと降りて来ると同時に肩を並べて前の者に続いて歩く。
本当なら胸ぐらを掴み大声で脅かした後にもう片方の手で頭を掴み潰してやりたいところだが 授業中である上彼女に脅かしはちっとも通用しないことを理解している彼は それをグッと堪えて精一杯の睨みをきかす。…まぁ効果は無いが。
『ばくごうの髪、つんつんしてるように見えるけど結構風に揺れたりしてるからどんな感触なんだろうなって思って。』
「思って、じゃねぇ!てめぇどんだけ俺をイラつかせたら気が済むんだコラ!」
『いいっしょー髪くらい触ってもさー。も〜百人一首負けたくらいでいじけちゃってさー』
あははは、と笑いながら雪がバシバシと彼の腕を叩くとその度に歯ぎしりをする爆豪のこめかみに青筋が立つ。
「つーかてめぇ俺の事無視すんじゃなかったのかよ。」
『無視するのはばくごうの方から話しかけてきた時っ』
「ッチ、脳内花畑野郎が。」
『ばくごうがさ、』
そんな会話をしているうちに、訓練所の内部にたどり着く。
教師が話を始めようとしているため、最後に。口元に片手を当て、周囲から見えないように、そして誰にも聞こえないように、彼だけに聞こえるように。
『怒って怒って、怒るのに飽きちゃって、怒らなくなるくらい。かな。これ卒業までの目標。』
少し目を細めて、ちょっと悪い顔をしてみて。そう言った彼女の、考えていることが本当に分からない。
「っ…はぁ?バカか。」
『バカは心外っ』