第17章 ❄ フラッシュバック
『顔、全部見えてた方が好きだよ。私は。』
あぁ、と声を漏らすと彼は少し眉を顰めた。
『…』
そんな、少しの変化であったが 気が付いた雪は思わず一度口を閉じる。しかし…
「俺は、左は嫌『わあ~さらさら!』
前に目を向けていた轟は全く予期していなかった彼女の行動に驚き 柄にもなく慌ててしまう。
「ちょ、やめろっ」
『やだ!もっと触りたい!とどろきの髪、綺麗~』
なでなでと髪を触る手をパシッ、と捕まえた瞬間。
「んだとコラ出すわ!!」
突然の大声に雪はビクッと肩を揺らし動きを止めた。
(どうしたばくごう?う、うるさい…)
今ので完全に前の会話に意識が向いたらしい雪を見て轟は掴んでいた手を話し、鼻で大きく息を吐いた。
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
『あはは、ばくごうがかみなりにイジられてる!』
「うっせー!!てめぇは後ろでイチャついてんじゃねぇ!!」
わーわーきゃーきゃーと騒ぐ生徒達。傍から見たら仲のいいクラスで微笑ましく思うだろう。
だが、爆豪の他にもう1人。
「もう着くぞ。いい加減にしとけよ…」
「「「ハイ!!」」」
イラつきを含む相澤の言葉1つでバスの中での会話は終了した。
この後待ち受ける事態を、彼等が知る由もなく。
バスは目的地へと到着し、やる気に溢れた生徒達を降ろしてエンジンは落とされる。