第17章 ❄ フラッシュバック
担任の指示通り、コスチュームに着替えて校舎を出た。
直ぐにバスを見つけ、歩く。
校庭を暖かく彩っていた桜の花は、見上げてももう見つからない。
代わりに木々が纏うのは明るい緑色の若葉達。
それらを視界の隅に捉えながらも興味のある素振りは見せず、これからまた、徐々に気温が上がっていくのだろうと、少年は少し眉を顰める。
暑いのは嫌いだ…。そう、熱いのは…
とんっ… と。
そんな単純な音がぴったりな、軽い衝撃が背中に。
『あぅっ』
同時に聞こえた情けない声。
衝撃は踏み出していた右足で容易く受け止められ、そしていつもより少しだけ大きく目を開けて振り返る。
「……雪。」
『うぅ…あ、とどろきごめん。怪我してない?』
「してねぇよ。立てるか?」
まるでうさぎが誤ってぶつかって来たのではないかと思えるくらい弱々しい今の体当たりでどこを怪我すると言うのだ。
寧ろこちらの体幹がいいせいで(?) ぶつかって来たにも関わらず逆に吹っ飛ばされてしまった彼女が気の毒になってくるが…、いいや、こちらはなにも悪くは無い。
手を貸してやろうと差し出すと、彼女は『ありがとう。』と、素直に彼の手を掴む。
(冷てぇ。)
彼女の手は冷たい。冷たい方は 別に嫌いではない…。
「なんでこんな広い道でぶつかんだ。」
『よそ見してて。』
そう言うと彼女はグラウンドの方へ顔を向けた。
つられて視線を向ける。ただ他所のクラスが授業を受けているだけだ。そんなに夢中になるほど面白いのだろうか?
彼女は少し、変わっている。と思う。