第17章 ❄ フラッシュバック
「ッチ」
雪が顔を背けたことが何の合図になったのか、いじめモード全開だった少年は急に黙って教室を出ようと歩き出す。
『あ、ばくご』
彼の態度の変わりように軽く意表を突かれた雪が思わず名前を口にするが、構わず入口の扉を開いた。
周りを囲っていたクラスメイト達もそれぞれの残された休み時間を使うべく、ちらほらと散っていく。
『私…、私だってばくごうが名前で呼んでくれるまで無視するんだから!』
スラックスのポケットに手を突っ込み少し丸まっている背中が丁度教室から出て見えなくなったあたりで、少し大きめの声で呼びかける。
「うちらも行こ、雪。時間結構ないよ。」
『あ、うん。』
午後はヒーロー基礎学。しっかり昼食を取らなければ。
「こっちから話しかけたこたねぇだろ。」
一人食堂に向かう少年は、届ける気もない返事を小さく呟く。
❄️❄️❄️
「今日のヒーロー基礎学だが…俺とオールマイト、 そしてもう1人の3人体制で見ることになった。」
今回の授業内容はまだ聞かされていない。そういう日はまず教室で内容の説明があってから場所を移動するのが入学してからの1ヶ月弱、計15回程の授業で判明してきたいつもの流れだ。
そして大抵の場合、誰かがこう訪ねる。
「ハーイ!何するんですか!?」
夢をかなえるために最も有効な技術知識を学べる授業の始まりは、どの生徒もその内容が早く知りたくてうずうずしているのだ。
訊かれた相澤は、何やらごそごそと自身の首に巻き付けた、知らない人から見れば 個性的なマフラーにしか見えない操縛布の中をまさぐっている。
(そろそろ雪でもの作るの、授業でも使ってこうかな)
先生達に見てもらわないと…。考えながら、雪も担任の言葉を待つ。
「災害水難なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ!!」